疑問|有名曲の印象が違う理由

クラシックの曲をいくつか聞き比べてみると、ひとつ気になることがあります。

どれも同じように美しいメロディなのに、受ける印象はまったく同じではありません。

この違いはどこから生まれているのか。

この章では、その「なんとなく違う」と感じている部分を、少しだけはっきりさせていきます。

感じている「方向の違い」

ここでいう「違い」は、単に明るい・暗いという印象の違いだけではありません。

音がどこに向かって進んでいくように感じられるか。
あるいは、その場にとどまっているように感じられるか。

そんな「方向」の違いとして、私たちは音楽を受け取っています。

たとえば、

  • 気持ちが前に出ていくような曲
  • 少し静かに沈んでいくような曲

そんな違いを、なんとなく感じたことはないでしょうか。
実は、この感覚はクラシックだけのものではありません。
映画音楽やゲーム音楽、アニメの主題歌でも同じように使われています。

具体例で見てみる

ここまでで感じてきた違いは、実際の曲の中でも、同じように現れています。
ここでは、2つの有名な曲を通して、その「方向の違い」がどのように感じられるのかを見てみましょう。

ポイントは、「明るい・暗い」ではありません。
音がどちらに向かっているように感じられるかです。

広がっていくように感じる曲

たとえば、プッチーニの《トゥーランドット》「誰も寝てはならぬ」。
音がまっすぐ前に広がっていくような、開けた印象を受けることがあります。
とくにサビに向かうにつれて、音が遠くまで届こうとしているように感じる人もいるかもしれません。
少し意識して聞いてみると、音が外に向かって進んでいくような感覚があるかもしれません。

内側に引き込まれるように感じる曲

一方で、ショパンの《幻想即興曲》。
同じように美しい旋律ですが、どこか落ち着かない、揺れるような印象を感じることがあります。
音が次々と流れていくため、心がどこかへ引き寄せられていくように感じる人もいるかもしれません。
留まらない音の流れに、内側に引き込まれていくように感じられることもあります。

ここでは、あえて対照的な2曲の例をお伝えしました。
ここで感じてほしいのは、どちらが好きかではないのです。

「どちらの方が前へ進んでいくように感じるか」
「どちらの方が内側へ向かうように感じるか」

このことを意識してみてください。

なぜここまで違って聞こえるのか

同じ「きれいな曲」なのに、なぜここまで印象が変わるのでしょうか。
ここで感じている違いは、単なる気分の問題ではありません。

音の動き方や、どの音に重心が置かれているかによって、自然とそう聞こえるように作られています。
だからこそ、まずは「どこが違って聞こえているのか」を感覚のまま捉えることが大切になります。

演奏だけでは説明できない違い

演奏やテンポの違いも、もちろん関係しています。
ですが、それだけでは説明しきれない部分があります。

たとえば、同じテンポで、同じように演奏されていても違いは発生します。
「外に広がるように聞こえる曲」と「内側に引き込まれるように聞こえる曲」です。

この違いは、演奏の仕方だけで生まれているわけではありません。

たとえば、ある音が「落ち着く場所」として使われる。
そうなると、音楽はそこに向かって進んでいくように聞こえます。

逆に、落ち着く場所がはっきりしない。
これは、どこか揺れているような、安定しない印象になります。

つまり、感じている印象には、きちんとした“音の理由”があるということです。

少しだけ考えてみる

ここまで読んできて、いくつかの違いが思い浮かんできたかもしれません。

「明るい」「暗い」だけではなく、

  • 前に進んでいくような感じ
  • その場にとどまるような感じ
  • 外に開いていくような印象
  • 内側に引き込まれるような感覚

そんな違いとして捉えられることもあります。

すべてをはっきり言葉にできなくても問題ありません。

ただ、「なんとなく違う」と感じていたものに、少し輪郭が見えてきていれば、十分です。

このあと音を聞くときに、その違いがよりはっきりしてくるはずです。

この講座で扱うこと

実はここには、もっと根本的な違いがあります。

この講座では、その違いを実際の音と一緒に確かめながら、少しずつ言葉にしていきます。

たとえば、

  • 「なぜ明るく聞こえるのか」
  • 「なぜ落ち着かない印象になるのか」
  • 「どこに向かっている音楽なのか」

こうしたことが、なんとなくではなく、少し説明できるようになります。

難しい理論を覚える必要はありません。

ただ、今まで「なんとなく違う」と感じていた部分が、少しずつはっきりしてくるはずです。

まずは音を聞いてみる

ここまでで感じてきた違いは、実際の音を聞くことで、よりはっきりしてきます。

まずは、ひとつずつ音を聞いてみましょう。

短い音ですが、「外に広がる感じ」や「内側に引き込まれる感じ」を感じてください。
そして、その違いが、どのように生まれているのかを意識してみてください。

うまく言葉にできなくても問題ありません。
「さっきより少し違って聞こえる」と感じられれば、それで十分です。

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