こんにちは。
音の小部屋から、はじめてのコラムをお届けします。
今日は、「ことばの余白」について、すこしお話しさせてください。
このところ、少しずつ日が長くなってきましたね。
午後の光にやわらかさが混じっていて、
春の気配が、そっと空気の中に忍び込んでいるような、そんな日。
そんなとき、ふと、
言葉にも「余白」が必要だなぁと思ったりします。
言葉を書こうとすると、
不思議と、どこかに力が入ってしまうことがあります。
しっかり伝えなきゃ、
意味のある内容にしなきゃ、
相手に届くように、ちゃんと整えなきゃって。
そんなふうに思えば思うほど、
文章がきっちり詰まっていって、
いつのまにか「呼吸の入る場所」がなくなっていることに気づきます。
読んでいる人にとっても、
あまりにぎゅうぎゅうに詰め込まれた言葉って、
ちょっと疲れることがあるんですよね。
中身が重たいわけではないのに、
どこか読みにくい、入りにくい。
そんな文章になってしまっていることがあるなって、思います。
だから最近は、
「何を書くか」だけじゃなくて、
「どこに余白を残すか」を意識するようになりました。
あえて語らないこと。
あえて入れない言葉。
あえて開けておくスペース。
たとえば、改行のタイミング。
ちょっと空けてみるだけで、読む人の呼吸が整うこともあります。
それから、語尾の選び方。
言い切るのではなく、
ふわっと着地するような言い方を選ぶと、
言葉がトゲを持たなくなることもある。
書くって、つい「足していく作業」だと思いがちだけど、
ほんとうは、「引いていく作業」でもあるんですよね。
引くことで見えるもの。
語らないことで伝わるもの。
「うまく書く」ことよりも、
安心して読める空気を届けること。
それもまた、ことばの持つ力のひとつかもしれません。
あなたの書いた言葉が、
誰かの中でそっと息をするように届くには、
きっとその“余白”が、静かに効いてくる。
今日のこの声も、
春のひかりのように、やさしく届いていたらうれしいです。
また、静かな時間にお会いできたら。
—— 音の小部屋より、やわらかな声のコラムをお届けしました。